孤島の鬼

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2024-11-18

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概要

『孤島の鬼』(ことうのおに)は、江戸川乱歩の著した長編探偵小説。大衆雑誌『朝日』(博文館)に、1929年(昭和4年)1月から翌1930年(昭和5年)2月まで連載され、のち改造社から単行本として刊行された。筒井康隆、深谷忠記、皆川博子、中井英夫ら、乱歩の最高傑作として挙げる人も少なくない。明智小五郎が登場しない作品であるが、高木彬光によれば乱歩自身もまた、長編では本作が一番出来が良いと考えていたようである。

あらすじ

まだ30歳にもならないが髪は白髪である青年「わたし(蓑浦)」の回想の形で物語は綴られていく。

25歳で貿易会社に勤める蓑浦は、同僚の木崎初代と相思相愛の恋に落ちるが、初代に強力な求婚者が現れる。それは蓑浦の先輩である医学者、諸戸道雄であった。しかし諸戸は昔から蓑浦に強い同性愛の感情を抱いており、蓑浦はもしかしてそのために、彼が初代に求婚したのではないかと疑う。

そんなある日、初代が自宅で密室状態の中、刺殺される。蓑浦は復讐を誓い、素人探偵業を営むもうひとりの年長の友人、深山木幸吉に捜査を依頼する。しかし深山木も、混雑した海水浴場で蓑浦の目前において、何者かによって刺殺されてしまう。

海水浴場の中に諸戸の姿を発見していた蓑浦は、後日諸戸を問い詰めるが、諸戸は自身も事件の捜査をしており、しかも犯人を今この家に呼び出していた。2つの殺人事件の実行犯は曲芸一座の子供であった。諸戸は子供に犯行を自白させることに成功するが、背後にいる黒幕の正体を聞きだそうとした瞬間、子供は窓の外から拳銃で射殺されてしまう。

深山木は殺される直前、蓑浦に、初代の持っていた彼女の真の出自を示した家系図と、ある不思議な人物の手記を郵送していた。その家系図には財宝の隠し場所らしき暗号めいた文章が記されていた。手記のほうは、男と身体をくっつけられて幽閉されている秀ちゃんという女のものである。その手記に書かれた風景が、諸戸が育った紀伊半島の沖の孤島・岩屋島、および、亡き初代が子供の頃に住んでいた場所にも似ていることに気づいた蓑浦と諸戸は岩屋島に向かう。諸戸は、すべては父親丈五郎の所業と見てとり、丈五郎と対決しようとしていた。諸戸が初代に求婚したのは、嫉妬のためもあったが、実は父丈五郎の命令でもあり、それは、島の財宝の隠し場所を記した家系図を手に入れるためであったと分かったからだ。

岩屋島の諸戸邸は、主人の丈五郎はじめ、その妻も、また雇われ人も奇形者で、また多くの奇形者が幽閉されていた。丈五郎は自らが奇形に生まれた復讐に、奇形児の増殖に一生を賭けており、息子道雄もそのために医学への道を歩ませたのであった。諸戸は父により蔵に閉じ込められてしまうが、脱出し、逆に丈五郎を蔵に閉じ込める。蓑浦は諸戸とふたりで財宝探しに、島の地下に広がる洞窟に入る。そして道に迷って、死や諸戸の求愛という恐怖を味わいながらも、財宝を見つける。そこには蔵を脱出し、先に財宝を見つけ発狂した丈五郎もいた。簑浦は洞窟での恐怖の体験のため髪が真っ白になっていた。

のち、手記の主である美少女秀ちゃんと惹かれあっていた蓑浦は、諸戸の手術で男と分離させられた彼女と結婚する。彼女は木崎初代の妹であり、岩屋島の主たる樋口家の子孫、あの財宝の正当な相続者であった。ふたりはその金で奇形者のための施設を開設する。諸戸も丈五郎の子でないことが判明し、実の親の元に帰るが、直後病気で死す。臨終の最後まで諸戸が呼んでいたのは蓑浦の名前であったと簑浦は手紙で知らされる。