カンポンボーイ

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カンポンボーイの一覧

概要

『カンポンボーイ』(原題: The Kampung Boy) は、マレーシアの国民的漫画家でもあるラットの代表作。1950年代にペラ州のカンポン(村落)で育つ少年を描いた作品でラットが自ら描いた回想録でもあり、ジャングルやスズ採鉱地で遊んだ思い出や割礼の体験、家庭や学校での生活が題材にされている。初版は1979年にブリタ・パブリッシングから刊行され、売り上げ面でも批評面でも成功を収めた。1999年には同題でアニメ化された。オリジナル版はマレー語混じりの英語で書かれていたが、マレー語やフランス語の版もあり、海外で現地版も刊行された。日本版は1984年と2014年の二回にわたって刊行されている。

作者のラットは本書によってマレーシア国内での名声を確立し、東南アジアを中心として国際的にも知られるようになった。2006年に Kampung Boy として刊行された米国版は米国児童図書評議会などから複数の賞を受けた。『カンポンボーイ』は一つのフランチャイズとなり、マレーシア国内でグッズ化されたり、切手のデザインに使われたり、飛行機の機体に描かれてきた。

1981年に出た続編『タウンボーイ』(Town Boy) は主人公が10代になって都市に移ってからの暮らしを描いている。1993年にはスピンオフとして、1980年代のマレーシアの子供の暮らしと『カンポンボーイ』で描かれた1950年代を比較対照する『カンポンボーイ 昨日・今日』(Kampung Boy: Yesterday and Today) が刊行された。

プロット



『カンポンボーイ』は少年マットと、マットがカンポンで過ごす日々を絵と文で描いた物語である。作者ラットは主人公であると同時に語り手でもある。

マレーシア、ペラ州のカンポンで主人公が生まれるところが幕開けとなる。誕生を祝う伝統行事がそれに続き、祝福の唱句、宗教歌の合唱と一連の儀式が執り行われる。マットは成長とともに家の中を探検し始め、やがて家族が住まいの外で行うおかしな行動に焦点が当てられていく。

6歳になったマットは公教育の第一歩としてコーランを学ぶ塾に通い始め、そこで出会った新しい友達から川泳ぎやジャングル探検を教えられる。両親は息子が勉強に興味を示さないことを心配する。マットも親の気持ちは分かるが、遊びをあきらめてまで勉強に励むつもりはない。10歳になるとベルスナット(割礼式)がある。事前の儀式は物々しいもので、大勢で川まで行進して沐浴を行わなければならない。割礼自体は「アリにかまれたような」一瞬の作業で済む。傷が治ると、弟妹とともに町の映画館に連れて行ってもらう。

あるときマットは友達と一緒にスズの露天掘り鉱山に侵入し、浚渫船が排出する泥を鍋の中でゆすって価値のある鉱石をより分ける方法を教わる。これは違法行為だが、採掘会社はそれほど厳しく取り締まっていなかった。マットは鉱石を父に見せて褒めてもらおうとする。しかし父親は、それは泥棒だと怒りだし、勉強をさぼって将来をないがしろにしたことでお仕置きする。マットは両親の嘆きを漏れ聞き、さらにいずれ相続するゴム園を見せられたことで勉強に身を入れるようになる。やがてその甲斐あって「小学校4年生のための特別な試験」に合格し、州都イポーにある全寮制学校に入学する資格を得る。

合格を知らせようと急いで帰宅すると、父親は採掘会社と交渉しているところだった。スズが埋蔵されているのが見つかったら、家族のゴム園を多額で買い取ってくれるのだという。カンポンの住人の多くは土地を売却することを望んでおり、マットの家族も大金を得てイポーに移る計画を持っている。進学のためカンポンを発つ日が訪れ、マットは期待に胸を膨らませるが、別れの時間が近づくにつれて悲しみが襲ってくる。マットは自分がカンポンを大好きなのだと気づき、もうスズが見つからなければいいと願う。