『銀と金』(ぎんときん)は、福本伸行による日本の漫画作品。1992年から1996年まで『アクションピザッツ』(双葉社)に連載された。単行本は全11巻。「銀王」と呼ばれる裏社会のフィクサー、平井銀二と、それに見いだされて才能を開花させ、やがて銀を超える「金」になるという望みを抱くようになる青年、森田鉄雄というふたりの男を中心とした、株の仕手戦や政治家との裏取引などの駆け引き、殺人鬼や復讐に身を委ねた男との命を懸けた死闘、さらに福本が得意とするギャンブル勝負を描いた作品である。
物語中ところどころで語られる謎を残したまま休載というかたちで連載終了し、現在に至っても再開されていない。当初は銀二と森田を戦わせる展開で、物語を終わらせる予定だったと福本は語っている。
2005年12月から文庫版全8巻が出版されている。コンビニコミック版では金銭や経済情勢に関わる事象や事件などについてのコラム記事「マネーレポート」が掲載されている。2014年7月28日に単行本の新装版が発売された。
2017年1月からは、テレビ東京でドラマ化作品が放送された(後述)。
ストーリー
第1話 - 第14話
競馬場で主人公の森田鉄雄が平井銀二に声をかけられるところから物語は始まる。典型的なギャンブル中毒者であった森田に、銀二は数個の段ボール箱をアパートまで運ぶ、簡単な仕事に誘う。怪しみながらもしぶしぶ仕事をこなした森田が銀二の隙を見て箱を開けると、そこには札束が詰め込まれていた。驚く森田を尻目に、銀二はそこへ集まった人々に次々と金を貸し付けていく。最後に、銀二は森田の前に貸付金の残りの札束を積み上げ、ある老人の殺害を依頼する。
答えあぐねる森田に対し、銀二は徐々に札束を減らしていく。森田はいったん立ち去るが、ふたたび銀二の前に戻り、「人殺しはできない、だけど裏社会で生きたい」と懇願する。そんな森田に、「その気持ちを忘れるな」と告げ、次の計画、日本旭との株の仕手戦の内容を話す。銀二と仲間たちは仕手戦を制し、政権与党である自由民政党の大物議員・伊沢や、帝日銀行の頭取である土門とも協力関係を取り付ける。
第15話 - 第21話
銀二は、知り合いの広瀬から森田を試す仕事を受ける。その依頼とは、暴力団が偶然捕まえた世間を騒がせている稀代の殺人鬼・有賀研二を警察との取引に使うため、引き渡しまで軟禁状態のまま見張る仕事だった。
有賀が捕らえられている部屋に案内された森田は、銀二から一丁の拳銃を受け取るが、その銃は銃弾が込められていない、脅しだけのものだった。その場は無事にやり過ごした森田だったが、交代した組員の不用意な行動から凶器を手に入れた有賀は、凄惨な殺戮を始める。組員たちは皆殺しにされ、残った森田も追い詰められてゆく。間一髪のところで、銀二が駆けつけて有賀をたやすく制圧し、瀕死の森田を病院に運ぶ。
第22話 - 第33話
有賀との戦いで九死に一生を得た森田は、そのまま入院生活を送っていた。周りから浮いた森田に、同室の患者やその知人は、まっとうな職を斡旋し足を洗うように勧めるが、森田はそれを一蹴し、改めて裏の社会で生きる決心を固める。そこへ現れた銀二に、確実に5千万円を取るか、それとも0か5億円のどちらかが入っているジュラルミンケースを選ぶかの選択を提示され、後者を選ぶが、銀二の巧みな誘導により、5億円を逃す。銀二が立ち去ったあと、手にしたケースのなかにはわずかな金と、「この金を5億にしろ」との指令が書かれた紙が残されていた。
街を放浪し、情報を手に入れるためにホテル内の喫茶店に入り浸るうち、森田は画廊の中条と稚拙な画力の美大生・青木との会話を耳にする。さらにその後、業界紙で土門が紹介していたセザンヌの絵画「ジャ・ド・ブッファンの眺め」(Jas de Bouffan)の記事を見たとき、ある作戦を思いつく。
その後、うまく中条と知り合いになった森田は、罠に嵌められかける。そこに現れて危機を救った男・川田と協力関係を結び、本格的に計画を進める。森田は土門のもとから入手したセザンヌの絵画を餌にして中条にギャンブルを持ちかけ、大金の入手に成功する。川田は今後も森田と協力しようとするが、森田は手段を選ばない川田のやり方を許せず、決別することになる。
第34話 - 第42話
森田は、銀二の「金は常に抱いていろ」との話に従い、2億円の現金をバッグに詰め、行く先も定めず街を放浪する。そんななか、出入りする喫茶店の店員・美緒から賭けポーカーで女の子と対戦し金と身体を賭けの対象にし、大勝ちしているという、有名企業の跡取りである西条ら三人組の噂を聞く。美緒たちの仲介で森田は西条に近づき、勝負に立ち会うが、金を盾に勝負を決めようとする西条に対し、森田はそれ以上の金を積み上げる。
その場は森田の勝ちで収まるが、西条は屈辱に燃え、青天井でのポーカーの勝負を挑み、森田もそれを受ける。その後、知り合いの女の子たちから情報を得た森田は、西条たちが何らかの不正をしていると踏むが、結局方法が分からないまま勝負の日を迎え、方々から金を工面して勝負に臨む。壮絶な金の積み合いとトリックの応酬の果てに、森田は西条を下す。
第43話 - 第58話
ついに目標の5億円を突破した森田は、ふたたび銀二と合流する。次に銀二が狙うのは、日本でもトップクラスの企業グループ「誠京」の会長、蔵前仁。目的は蔵前が持つ政治家たちの借金の借用書を取り戻し、政治家を手駒にするため。そのためには、蔵前と直接ギャンブルで勝負し、500億円分勝つしかない。しかし逆に500億円分負ければ、銀二たちは蔵前の支配下に置かれることになる。
数あるギャンブルの種目のなかから、森田はあえて蔵前が得意とする麻雀を選ぶ。彼なりの作戦があってのことだったが、莫大な資金と巧みな勝負経験を持つ蔵前には通用せず、あっという間に危機に追いやられる。
茫然自失となった森田に、銀二は「飼われる前に死ね」とナイフを渡す。死ぬ覚悟を決めた森田の前に現れた銀二は、蔵前が持つ資産すべてを吹き飛ばすほどのある秘策を告げる。ぎりぎりの博打の結果、銀二たちは大勝利を得ることになる。
第59話 - 第64話
銀二より勝負の結果報告を受けた伊沢は次に、自身の持論である政治改正法案を通すための裏工作を依頼するが、銀二たちの工作が漏れ、法案は否決される。
そのことを危惧した土門から、伊沢がアメリカの銀行から一千億もの莫大な融資を受けていることを知った銀二は、この裏に秘められた真実を見抜く。後日、銀二・伊沢・土門の三者会談で、伊沢は事情を説明する。すべては政治資金を稼ぐための、伊沢の自作自演だったのだ。その後、伊沢とふたりきりになった銀二は自身の野望、すなわち日本全体の経済を支配する壮大な野望を語る。
第65話 - 第88話
銀二が伊沢と会っているあいだ、森田は銀二が受け取った、暗号とともに伝えられた手紙による救助の依頼のため、独立行動を取る。依頼をした人物は、日本有数の家電メーカー「カムイ」会長の神威秀峰。G県の中枢N市S市Y市を事実上統治する名家の神威家は、家長となる兄弟ひとりのみに全財産と権利を相続させる「家長権」により繁栄したが、権力が集中するためにあまりに強権的になり、秀峰の代で家長権を消滅させ、全員で平等に受け継ごうと考えた兄弟により、病院に軟禁されていた。
森田は秀峰が懇意にしている病院の看護婦・田中沙織と協力し、秀峰を救い出したあと、神威家が建設した開業前のホテルへ移動し、そこへ兄弟たちを集める。秀峰は兄弟たちに家長権の重大さを説くが、子飼いの暴力団の組員らを味方につけた兄弟たちにより、逆に危機に陥る。運よく逃げ出した森田は、沙織が兄弟側の人間であることを悟り、このままではふたりとも殺されると説得し、逆襲に転じる。
幾度とない苦難のすえに兄弟たちを組み伏せ、安全を確保した森田たちは無事帰還できるかと思われたが、そこに現れた侵入者により組員らが虐殺され、「神威家鏖」とのメッセージを伝えられる。敵対する暴力団組織の殺し屋かと騒ぐ兄弟たちに対し、秀峰は「鏖」は「みなごろし」と読み、つまり標的は神威家だと説明する。侵入者の正体は、能力が劣るゆえに家のなかで差別され、虐待を受けてきた神威家の四男と五男で、森田は死闘のなかで復讐に燃えるふたりをなんとか救おうとするが、結果的にふたりは殺され、元凶である秀峰らが生き残る。この件をきっかけに森田は裏の世界から抜けることを決意し、銀二たちとも袂を分かつことになる。
第89話 - 第108話
森田が抜けて1年後、銀二は土門から帝日銀行が不良債権処理のために用意した300億円が実際の債権処理には全く足りないという事情を聞き、倍に増やすことを提案し借り受ける。そこで日本中央優駿会の実権を握り5,000億にも上る巨大利権を得る民政党総裁の河野に目をつけ、相手の土俵である競馬のGIIレースを舞台に、双方が6頭を出して1着馬を出した方が勝ちとし、共に300億を賭けて1回限りの600億総取り方式で取り合おうと持ちかける。
そのために、銀二はふたたび競馬場で出会った新たな相棒・川松良平を仲間に誘う。さらに優良馬や一流の騎手が河野陣営に奪われていくなか、銀二側は最強の騎手である岡部とその一派を味方に引き入れることに成功する。
厩務員などへの裏工作も着々と進行し、勝負の勝ち目が見えてきたかと思った矢先、河野側に工作が漏れ、水泡に帰す。しかし、銀二は落ち着いたまま、「本当の仕掛けは別」と話す。そして決着の日、銀二の策は河野の予想を上回り、鼻の差で銀二陣営の勝利に終わる。銀二は今回をもって引退するつもりでいたが、辛勝であったことで「勝ち逃げ」を許さないという何者かの意思を感じ取り、近い将来の敗北を予感しつつ、最後まで戦いつづけることを決意する。
出典: Wikipedia